salmontiskunの日記

高校卒業まで田舎育ちで、そこそこ世間的に評価の高い都内国立大学および大学院に進学、その後都内IT企業で企画事務担当として働くアラフォーサラリーマンのブログです。特にテーマは決めてませんが、奨学金返済、マインドフルネス、などなど、「精神的、経済的、肉体的に幸せに生きるためには・・・」というテーマでブログを書いていきます。

「高プロ」をめぐる議論を始める前に・・・まずは自分の立ち位置を整理する

働き方改革法案が2018/5/31 衆議院本会議で可決され、参議院での審議が始まった。現状の衆参両院の議席の状況を踏まえると、法案に多少の修正が入ったとしても最終的には可決されることと思う。
www.huffingtonpost.jp

高プロ」とは

働き方改革法案で議論が白熱した対象の一つが、「高度プロフェッショナル制度(通称 高プロ)」についてであった。残業代0とかホワイトカラーエグゼンプションとか過去様々な別名で呼ばれてきた高プロ、様々な記事で分かりやすい解説がなされているが、自分の理解も兼ね、あえてあらためて高プロの制度概要をここでまとめるとにする。*1

  • 対象者は年収1,075万円以上の高度なプロフェッショナル業務従事者・・・要は、高給取りの専門職従事者が対象、ということのようだ。想定されている高プロ業務従事者として、金融機関のディーラー、コンサルタント、研究者などが挙げられている。なお、「職務内容が明確に決まっていること」という要件もあり、欧米の雇用環境において一般的な「ジョブディスクリプション」*2を意識しているようだ。
  • 労働時間が青天井・・・高度プロフェッショナル業務に従事する者は、「成果と労働時間が関連しない」とされ、労働基準法における労働時間の規制が適用されない。一日何時間でも一月何時間でも働くことができる*3。いわゆる過労死ラインと言われる一月80時間を超える労働が続いたとしても、法の保護を受けられない。
  • 休日、休息規定も現行労働関連法とは異なる規定・・・高プロの対象者の休日は、1年間で104日、4週間で4日以上付与されるべき、らしい。長期休暇を除くと、平均して大体1週間に1日程度は休ませなさい、という意図のようだ。

上記高プロの制度概要は、長時間ストレスフルな環境で働かされている日本のサラリーマンの神経をいたく刺激する内容であった。昨年の電通の高橋まつりさんの過労死事件の記憶もまだ新しい中、「過労死を量産する気か」と野党や労組が厳しく批判している。
ただ、高プロが無制限に導入されることのないように、以下のような規定も存在することは明記しておきたい。

  • 本人の同意が必須。また同意の撤回が可能という情報もある。
  • 労使委員会*4の5分の4以上の同意が、高プロの導入の前提条件である。
  • 経営陣は、労働者の労働時間を把握する必要がある。
  • 休日や労働時間に何らかの措置を取ること*5

高プロ」が目指そうとする方向性自体は間違っていない・・・と思うが・・・

私は、「高プロ」が目指すべき方向性自体については、どちらかというと賛成の立場である。そもそも全労働者一律に、週40時間勤務を前提とし、残業時間の月限度を45時間まで、年限度を360時間まで、と置くのは現実に即していないと感じる。少なくとも、現状の労働基準法は「会社が大好きで、長時間働いて成果を出したい」と考える労働者の存在は二の次に置いていることは否定できないと思う。たとえば、ベンチャー企業で働くものの殆どにとっては、雇用側であれ、雇用される側であれ、労働基準法は何の存在価値もない法律である。彼らは自分の意思でひたすら寝る間を惜しんで働いている。自分の夢を実現するために。

ベンチャーに限らず、「会社で働くのが大好きで、会社に長時間いることに何のストレスも感じない」という労働者は大企業にもいると思う。実際私の同僚にもいる。独身のその彼はとにかく仕事が好きで、長時間働いて成果を出すことが現時点での最大の人生目標だとのこと。最近残業に関する社会的な視線が厳しくなり、ワークライフバランスが声高に主唱されるようになった影響で、私の会社も勤怠管理を極めて厳格に実施するようになり、その彼も「最近会社からの残業規制がきつい。思う存分働けないから、欲求不満がたまっている」と私に愚痴をこぼしていた*6

要は「会社で働くこと」に対する考え方は人それぞれで、労働に対する価値観が多様であるという当たり前の事実を踏まえると、全労働者を一律に週40時間という制限に労働者を縛るのは、万人を幸せにしない、と思う。
人それぞれ状況も価値観も違うという前提に立ち、人それぞれ個々の状況に応じた労働環境が提供されれば、よいのだ。
会社でのキャリアを追求し、仕事が自己実現の手段となっている者にたいしては、労働時間の縛りなく、まさに「高プロ」で定義されているような労働環境が与えられ、ワークライフバランス重視派の方々には現行労働基準法に準ずる労働環境が用意されれば、それがベストではなかろうか。

以上の私の基本的な考え方を述べたが、ただ、「高プロ」を今の日本で導入すると悪影響の方が多く、悲惨な結果があちらこちらで見られそうな気がする。というわけで、私は高プロが目指そうとする方向性については反対ではないが、現時点での高プロの導入は反対である。その理由は次回の記事で述べたい。

*1:高プロについては、以下 「高プロ」導入で問われる「労働組合」 働き方が多様化する時代で「存在意義」はどこに? - 磯山友幸のブログや、『高度プロフェッショナル制度』とは?「同制度で柔軟な働き方が可能になる」は本当か?(弁護士が解説)(2018年5月29日追記) | 残業証拠レコーダー を参照した。

*2:ジョブディスクリプションの詳細は、「ジョブ・ディスクリプション」とは? - 『日本の人事部』 がわかりやすい。

*3:雇用側が労働者を無制限に働かせられる、とも言える

*4:経営陣と労働者の側をそれぞれ代表する委員からなる委員会

*5:深夜労働回数の上限、1年に必ず2週間以上の休暇を与えること、等々

*6:彼は家に仕事を持ち帰って種々作業をしているようだが、会社に比べて効率は落ちると言っていた