salmontiskunの日記

高校卒業まで田舎育ちで、そこそこ世間的に評価の高い都内国立大学および大学院に進学、その後都内IT企業で企画事務担当として働くアラフォーサラリーマンのブログです。特にテーマは決めてませんが、奨学金返済、マインドフルネス、などなど、「精神的、経済的、肉体的に幸せに生きるためには・・・」というテーマでブログを書いていきます。

高プロ議論で「自己責任論」を唱える方々へ

高プロをめぐる議論で「過労死は自己責任論」を声高に叫ぶ人たち

世の中には想像力のない人がいる。高プロをめぐる議論で声高に自己責任論を叫びたてる人たちもその典型的な例だ。

経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。過労死を含めてこれは、これは自己管理だと私は思います。(中略)労働基準監督署も不要です。個別企業の労使が契約で決めていけばいいこと


挙句の果てには・・・

これまで述べてきたように、労働者がそれぞれの労働観やその時々の状況に応じて、望ましい働き方を自由に選べられる労働環境が実現できれば素晴らしいし、個人の自己決定権に基づき、過酷な労働環境から自由に逃れられる状態に万人がいられれば、何よりだと思う。ここで、あえて、奥谷社長や田端氏の言葉を借りれば、全ての日本の労働者が適切に自己管理できて、会社の命令を時には拒否でき、場合によっては会社を自由に辞められれば、理想の状態と思う。

ただ、現実問題として、多くの労働者がこれまで肉体的精神的に過酷な環境に置かれつつも、自分の自由意思に従った決断ができなかったし、その状況は今も続く。肉体を害し、精神を病み、自ら命を断つまでに思いつめる労働者が今でもそれなりに存在する。

2018年のこの日本において、肉体や精神を労い、合理的で妥当な意思決定を行えない労働者が存在するのはなぜか。安易に自己責任論の議論を持ち出す前に、その背景や構造をまず深く分析、理解しようとするのが先ではないか。田端氏は「鎖で繋がれ鞭打ち強制労働じゃないんだから帰ればいいだけ」と述べているが、「なぜ帰れないのか」「なぜ今現代の日本において、そこまで思いつめてしまう労働者が存在するのか」の構造的問題に思いを馳せてほしい。

自己責任論の議論を乱暴に持ち出す前に、想像し、議論すべきことは山ほどある

たとえば、

  • 日本の雇用慣習的に、ある程度の年齢を過ぎると転職が極端に難しくなり、会社と労働者のパワーバランスが会社側に大きくシフトするという構造。

 →奥谷氏や田端氏は、「何歳になっても転職できるようなスキルを身に着けられなかったことを含め自己責任」と主張するだろうが、田端氏が優秀だからと言って、他人がそうではないことくらい想像力を働かせてほしい。「頭が悪い」ということが自己責任というのには、全く共感できない。

他には、

  • 欧米のように各人の仕事範囲がジョブディスクリプションによって明確に区切られているわけではなく、日本ではまじめで仕事が高い人ほど細々とした雑務を引き受け、疲弊しがちで残業のスパイラルにはまりがちな構造

 →奥谷氏や田端氏は、「Noと言えない人が悪い、自己責任だ」というのだろうが、まじめに仕事をコツコツこなす優秀な労働者を適切に労務管理できない経営側の責任転嫁にしか聞こえない。

そして何より、

  • メンタルが生まれつき強くなく、会社からの圧力に耐えきれず、うつ病を発生し、ありとあらゆる正常な判断が不可能になった労働者の存在

 →恐らく田端氏も奥谷氏もうつ病を患ったことがなく、精神の病の恐ろしさを肌感覚として理解できていないのだと思う*1。彼らは、もしかしたら「弱いメンタルを持っていること含め、うつ病を発症したこと自体が自己責任で、自分でメンタルを強くするなりして対処すべき」と考えているのかもしれない。そうだとすれば実に恐ろしい。人として重要な、共感力、弱き者をいたわるという資質が欠けているとしか言えない。会社が労働者を巧妙にマインドコントロールし、精神を病ませ、自分の意のままに従わせている状態で自己責任論を持ち出しても万人の共感は絶対に得られないし、絶対に間違っている。

田端氏に関して言えば、炎上商法を糧にして、これまで自分のキャリアを築き上げてきた方のようだし、あまり真面目に彼の言葉を逐一取り上げる必要はないのだと思う。近々書籍を販売するということだし、どのような形であれ彼の知名度アップに寄与する活動には関わりたくない。
ただ、彼の好戦的な一連の発言は、どうしても看過したくない。今回のような極めてて不適切な発言に対しては、節度を持った冷静な態度で批判、コメントしていくべきと思う。

エキセントリックな愉快犯のコメントが流布するのを少しでも抑えるために。

*1:患ったことがなくても、成熟した大人としてのの想像力、共感力をもって、その恐ろしさをある程度イメージして頂きたいものだが