salmontiskunの日記

高校卒業まで田舎育ちで、そこそこ世間的に評価の高い都内国立大学および大学院に進学、その後都内IT企業で企画事務担当として働くアラフォーサラリーマンのブログです。特にテーマは決めてませんが、奨学金返済、マインドフルネス、などなど、「精神的、経済的、肉体的に幸せに生きるためには・・・」というテーマでブログを書いていきます。

奨学金という名の教育ローン事業を公的機関が運営する意味について考える -その2

返済を前提とする奨学金(学生ローン)事業は、公的機関がやらなくてよい

前回の記事に続く。私が給付型ではなく貸与型の教育ローン事業を民間に任せた方がよいと考える理由はまとめると、以下の通りである。

  1. 民間の金融機関ですら難しい与信管理、返済状況管理、滞納者への督促などの作業を公的機関の公務員が適切に実施できるとは考えにくい。
  2. 日本学生支援機構奨学金という名の学生ローンの回収を適切に実行できないと(最近状況は改善したとは言え、以前延滞金額は巨額である)、穴埋めには必然的に税金の投入が必要となり、間接的に国民全てでその負担を負うことになってしまう。
  3. 日本学生支援機構は、公的機関にしかできないことに徹し、民間企業に任せられることは民間企業に任せることで、日本学生支援機構の事業運営に必要な職員数その他諸々を削減でき、社会的コスト削減できる。

公的機関が与信管理、返済管理、滞納者への督促を行うのは得意と思えない

普通に考えて、与信管理、返済管理、滞納者への督促などの業務は民間企業の方が得意、というのは容易に想像できる。

ここで、「資金調達に悩む中小企業を救済すること」を目的に石原慎太郎都知事鳴り物入りで2004年に開始した都民銀行事業(都が1,000億円を融資)を思い出してみよう。都知事の思い自体は崇高で立派だったのかもしれない。しかし、長年の融資ノウハウを有する民間金融機関でも長引く不況のために貸し倒れに悩まされ、収益が圧迫されていたこの時期、都が80%を超える株を有する大株主として君臨する半公的銀行が、与信管理を適切に実施した上で融資、回収業務を適切に行えるはずはなかった。結果として設立後3年で1000億円近い累積赤字を抱え、都が400億円を追加出資するに至るも、状況は根本的に改善しなかった。最終的に都民銀行は複数の他の銀行と合併し、2018年5月きらぼし銀行として再出発しているものの、東京都保有株は3.9%にとどまっている。公的機関が経営に大きく関与する金融機関が最終的に失敗に終わった、一つの典型的な事例といえる。

www.kiraboshibank.co.jp

日本学生支援機構の「学生がどんなときでも安心して学ぶことができるよう、必要なサービスを提供していくこと」という理念自体はとても崇高で立派だが、現実的にできないことや不得意なことはやらない方がよい。第一に、機構の失敗の穴埋めには税金が使われるのだから*1。第二に、公的機関が担う範囲は公的機関にしかできない範囲に限定した方が、効率的な社会運営という観点でも望ましい。公的機関が関与する範囲が拡大すればするほど、その運営コスト(従業員の人件費その他諸々)として税金が必要となる。

私は必ずしも「徹底して公の業務の民営化を徹底的に推進していくべき!」という考え を持っていない。どちらかというと、「結果の平等(と今でもいうのだろうか)」にsympathyを感じるが、それでも現在日本学生支援機構が実施している奨学金事業の一部を民間に手放したところで、「結果の平等」が毀損されるとは思えないし、社会の効率的な運営という意味では、民間移譲すべきだと考えている。

次回は日本学生支援機構が運用する奨学金事業のあるべき姿、について少し突っ込んで考えてみたい。

*1:民間企業の場合は、原則として事業に失敗した場合の穴埋めは広く浅く投資家(株主)が負担することになるが、それは「自己責任」で処理されてよい問題である