奨学金という名の教育ローン事業を公的機関が運営する意味について考える
5/16の記事と5/17の記事に関連して・・・もう少し思うことを追記したい。
日本学生支援機構の事業概況
日本学生支援機構のホームページによれば、
学生がどんなときでも安心して学ぶことができるよう、必要なサービスを提供していくことを組織の目的に掲げ、我が国の将来を担う若者たちの学びと成長を見守っていきます。
とのことだ。
日本学生支援機構は、独立行政法人ということで半官半民であり、常に税金の投入を前提に事業を行っている。普通の一般企業のように「利潤の追求が組織存続の絶対的な前提条件」というわけではない*1。前身の日本育英会の歴史を踏まえても、「学生がどんなときでも安心して学ぶことができる」ようにするための公的サービスを提供する機関という意味合いが強いようだ。
ただ、誰もが公的サービスとして認める給付型奨学金事業を展開する一方で、返済を前提とする奨学金事業も展開しており、後者はどちらかというと民間の数あるローン事業と同等の性質を有している。無利子型の奨学金事業であれば、利息返済分を奨学金を借りたものから免除しているという意味ではまだ公的サービスの性質を有すると言えると思う。しかし、有利子型の奨学金事業、利率が住宅ローン等と比較して多少安いという事実*2を踏まえても、実質的にローン事業に他ならない。
返済を前提とする奨学金(学生ローン)を公的機関が運営する意味があるのか
奨学金に限らず、住宅ローンの分野や、創業融資や中小企業への融資などの分野で、民間企業だけではなく公的機関の息がかかった半官半民の機関が関与するケースは多くある。前者の例は住宅金融支援機構の「フラット35」、後者の例は日本政策金融公庫の「新創業融資制度」、などがその例である。
なので、奨学金事業だけを取り上げてあれこれは少し違う気もするが、そもそも民間に数多くの日本学生支援機構が提供しているのと同等の教育ローンサービスが存在するのであれば、わざわざ日本学生支援機構が返済を前提とした奨学金事業を実施する意味があるのか、と考える。
公的性質を有する日本学生支援機構が提供するサービスは、公的機関にしか実施できない給付型事業に徹し、返済を前提とする学生ローン型事業は民間企業に任せる、という考え方も一つありうるのでは、と思う。まず、シンプルでわかりやすいし、民間にできることは民間に任せるのが様々な面で効率的であるからだ。
(次の記事に続く)